「医学部専門予備校に通っているのに、成績が上がらない」
そんな悩みを聞くと、私はいつも少し不思議に思う。
なぜ「医学部専門予備校に通っているのに」なのだろう。
医学部専門予備校に通っていれば、成績は上がるはずなのだろうか。
私は、まずそこから考え直してみてもいいと思う。
そもそも、なぜ医学部専門予備校に行くの?
医学部専門予備校を選んだ理由は何だろう。
「医学部の合格実績が豊富だから」
なるほど。でも、その実績を出した受験生たちと、自分の学力や学習状況は同じだろうか。
予備校に合格実績があることと、自分が合格できることは別の話だ。
「医学部受験に特化したカリキュラムがあるから」
それも魅力のひとつだろう。
では、そのカリキュラムについていけなくなったらどうするのだろう。
授業の進度に追いつけなくなったとき、自分に必要なところまで戻って学び直せるだろうか。それとも、授業についていけないという理由だけで、その年の合格を諦めてしまうのだろうか。
私はこれまで、医学部受験生から「授業についていけないから、今年はもう無理だと思う」といった話を聞いたことがある。
でも、ちょっと待ってほしい。
予備校のカリキュラムについていけないことと、医学部に合格するための勉強ができないことは、同じではない。
カリキュラムは学習のための手段であって、それをこなすこと自体が受験の目的ではないはずだ。
授業を受けて、何ができるようになった?
「授業を受ければ学力がつく」と思っているなら、ぜひ確かめてほしいことがある。
以前は解けなかった問題が、今は解けるようになっているだろうか。
一度教わった内容を使って、初めて見る類題にも取り組めるだろうか。
その確認を、どのくらいの頻度でしているだろう。
授業がわかりやすかった。先生の説明に納得できた。ノートもきれいにまとまった。
それはそれでよい。
でも、授業がわかったことと、自分で問題が解けることは別だ。
もし「専門予備校に通っているのに成績が上がらない」と感じているなら、入塾したときに期待していた学習の成果が、少なくとも今のところ得られていないということだろう。
だったら、まず確認したいのは予備校の看板ではない。
自分が何をできるようになり、何がまだできないのか、ということだ。
いっそ、近所の個別指導塾で大学生に教わってみたら?
私はときどき、こんなことを思う。
医学部専門予備校で高額な授業料を払い、医学部受験に詳しい講師に教わっているのに、思うように成績が伸びない。
それなら、いっそ近所の個別指導塾で、大学生のアルバイト講師に教わってみたらどうだろう。
もちろん、大学生講師にもさまざまな人がいる。学力も指導力も一様ではないし、医学部受験に必要な指導を誰もができるわけではない。
それでも、考えてみてほしい。
目の前にいる大学生は、少なくとも自分より先に大学入試を経験し、大学に進学した人だ。
もしかしたら、同級生だったかもしれない年齢の人に、今の自分は教わる立場にいる。
それを悔しいと思うなら、その悔しさを勉強に向けてみたらどうだろう。
そして、いつかこう言えるようになったらいい。
「もう教わることはありません。自分でできます」
大学生講師を見下してほしいわけではない。
教えてくれる人への敬意を持ちながら、いつまでも教わることを前提にせず、自分で学び、自分で問題を解き、自分で次の課題を見つけられるようになってほしいのだ。
医学部専門予備校に通うことが、受験勉強の主役になっていないか
医学部を目指す人には、ぜひ自分で勉強を進める力を身につけてほしい。
今は問題集も参考書も解説書も、さまざまなものが手に入る。
もちろん、独学だけでは理解しにくいこともある。講師の説明が必要なときも、学習計画を一緒に見直してもらった方がよいときもあるだろう。
だから、予備校に通うこと自体を否定したいわけではない。
ただ、自分に必要な勉強を探すことまで、予備校任せになっていないだろうか。
先生がよくない。授業が合わない。宿題がよくない。
そう感じることもあると思う。実際に、指導内容や学習環境が本人に合っていない場合もあるだろう。
でも、予備校に何を期待していたのか、その期待は現実的だったのか、という問いも忘れたくない。
医学部専門予備校に通っているからこそ、合格できる。
そんな保証はどこにもない。
予備校に通わず、自宅学習を中心に合格する人だっている。
大切なのは、どこで勉強しているかではなく、そこで何を身につけているかだ。
「通っているのに」と嘆く前に
医学部専門予備校に通っているのに成績が上がらない。
そう嘆きたくなったときは、一度、その「のに」を疑ってみてほしい。
自分は何を期待して入塾したのか。
その期待は、どこまで実現しているのか。
そして、今の自分は何ができて、何ができないのか。
医学部受験は、予備校の合格実績を借りて戦うものではない。
最後に試験会場で問題を解くのは、自分自身だ。
もっと謙虚に、もっと真剣に、もっと愚直に。
予備校の看板ではなく、自分の学力と向き合ってほしい。