臨床心理士×プロ家庭教師の家庭教師カウンセラーが心理学の問題を作りました。
大学院入試や心理学検定の力試しとしてご活用ください。
今回は産業・組織心理学の中から【ヒューマンエラー/ハインリッヒの法則/ヒヤリ・ハット/安全活動】についての【正誤(マルバツ)問題】です。
大学院入試では基礎心理学分野、心理学検定ではB領域(産業・組織)に該当します。
それではがんばってください。
問題
問題1
ヒューマン・エラーについて述べた文のうちもっとも適切なものはどれか。
- ヒューマン・エラーの一種である「アクション・スリップ」は計画段階における失敗をさす。
- ヒューマン・エラーの一種である「ミステイク」は実行段階における失敗をさす。
- ミステイクの防止には指差し呼称などの再確認行動が効果的である。
- 機械やシステムそのものに原因があるのでなく人間に原因がある失敗をヒューマン・エラーと呼ぶ。
問題2
ヒューマン・エラーに着目した事故モデルについて述べた文として適切でないものはどれか。
- Swain & Guttman(1983)の分類によれば、行為自体がなされなかった失敗をオミッション・エラー、正しくない行為をした失敗をコミッション・エラーとしている。
- Hawkins, F. は人間と他の4要素との境界の不適合によってヒューマン・エラーが発生するとしたSHELモデルを提唱した。
- SHELモデルのSは software、Hは hardware、Eは environment、Lは livewareを表す。
- SHELモデルに独立要素として「メンテナンス(maintenance)」を付け加えたものは m-SHELモデルとして知られる。
問題3
ヒューマン・エラーに着目した事故モデルについて述べた文として適切でないものはどれか。
- Reason,J. は「不安全行動」の観点から、スリップ(slip)、ラプス(lapse)、違反(violation)の3タイプを基本的なヒューマン・エラーとした。
- Norman, D. A. のATS理論は事例研究を通じてスリップ(slip)の発生メカニズムを説明した。
- ラダーモデルとATS理論を統合することによって開発されたのは包括的エラーモデリングシステム(GEMS)である。
- スイスチーズモデルとは、事故に対する防御壁の脆い部分をチーズの穴にたとえ、何層も防御していても穴が重なった部分を災害要因が通り抜けてしまえば事故が起こる、というものである。
問題4
ハインリッヒの法則について適切でないものはどれか。
- ハインリッヒ(Heinrich, H. W. )はアメリカの保険会社の社員であり、5000件の労働災害事例を統計的に分析した。
- ハインリッヒの法則によれば、330件の災害のうち29件が軽い傷害、1件が重い傷害となる。
- ハインリッヒの法則において事故や傷害の程度は状況の偶然性とは独立しているため、それらを誘発する不安全行動の制御の有効性を説いている。
- ハインリッヒの法則の考えに基づき、多くの職場で安全活動が実施されている。
問題5
職場の安全活動について適切でないものはどれか。
- ハインリッヒの法則によれば、重大事故と軽微な事故の背後には300件のヒヤリ・ハット体験があるとされる。
- TBM(Tool Box Meeting)とは、工具箱が置かれた現場でリーダーを中心に作業の危険性などについて長時間じっくり話し合う方法である。
- 危険予知活動とは、作業における危険を予想しメンバー間で共有する取り組みである。
- KAIZENは日本的経営ノウハウが含まれ、労働安全衛生について改善を図る活動として国際的に知られている。
解答・解説
解説の黄色いアンダーラインは適切な文章であることを表します。
問題1 ヒューマン・エラー
正答:4
- ヒューマン・エラーの一種である「アクション・スリップ」は計画段階における失敗をさす。→誤り。計画段階における失敗は「ミステイク」。
- ヒューマン・エラーの一種である「ミステイク」は実行段階における失敗をさす。→誤り。実行段階における失敗は「アクション・スリップ」。
- ミステイクの防止には指差し呼称などの再確認行動が効果的である。→誤り。指差し呼称などの再確認行動はアクション・スリップの防止に効果的。
- 機械やシステムそのものに原因があるのでなく人間に原因がある失敗をヒューマン・エラーと呼ぶ。
問題2 ヒューマン・エラーの事故モデルその1
正答:4
- Swain & Guttman(1983)の分類によれば、行為自体がなされなかった失敗をオミッション・エラー、正しくない行為をした失敗をコミッション・エラーとしている。
- Hawkins, F. は人間と他の4要素との境界の不適合によってヒューマン・エラーが発生するとしたSHELモデルを提唱した。
- SHELモデルのSは software、Hは hardware、Eは environment、Lは livewareを表す。
- SHELモデルに独立要素として「メンテナンス(maintenance)」を付け加えたものは m-SHELモデルとして知られる。→誤り。m-SHELモデルはSHELモデルにマネジメント(management)要素を付け加えたもの。
問題3 ヒューマン・エラーの事故モデルその2
正答:1
- Reason,J. は「不安全行動」の観点から、スリップ(slip)、ラプス(lapse)、違反(violation)の3タイプを基本的なヒューマン・エラーとした。→誤り。スリップ(slip)、ラプス(lapse)、ミステイク(mistake)を基本的なヒューマン・エラーとした。
- Norman, D. A. のATS理論は事例研究を通じてスリップ(slip)の発生メカニズムを説明した。
- ラダーモデルとATS理論を統合することによって開発されたのは包括的エラーモデリングシステム(GEMS)である。
- スイスチーズモデルとは、事故に対する防御壁の脆い部分をチーズの穴にたとえ、何層も防御していても穴が重なった部分を災害要因が通り抜けてしまえば事故が起こる、というものである。
問題4 ハインリッヒの法則
正答:3
- ハインリッヒ(Heinrich, H. W. )はアメリカの保険会社の社員であり、5000件の労働災害事例を統計的に分析した。
- ハインリッヒの法則によれば、330件の災害のうち29件が軽い傷害、1件が重い傷害となる。
- ハインリッヒの法則において事故や傷害の程度は状況の偶然性とは独立しているため、それらを誘発する不安全行動の制御の有効性を説いている。→誤り。ハインリッヒの法則によれば事故や傷害の程度は状況の偶然性に依存するため、それらを誘発する不安全行動の制御の有効性を説いている。
- ハインリッヒの法則の考えに基づき、多くの職場で安全活動が実施されている。
問題5 ヒヤリ・ハット体験、TBM、危険予知活動、KAIZEN
正答:2
- ハインリッヒの法則によれば、重大事故と軽微な事故の背後には300件のヒヤリ・ハット体験があるとされる。
- TBM(Tool Box Meeting)とは、工具箱が置かれた現場でリーダーを中心に作業の危険性などについて長時間じっくり話し合う方法である。→誤り。TBMは短時間で話し合う。
- 危険予知活動とは、作業における危険を予想しメンバー間で共有する取り組みである。
- KAIZENは日本的経営ノウハウが含まれ、労働安全衛生について改善を図る活動として国際的に知られている。
おつかれさまでした!
勉強がんばってくださいね^^
参考文献・参考サイト
職場のあんぜんサイト(厚生労働省)
ヒューマンエラーとヒューマンファクター(JR西日本)
M-SHELモデル(高崎ものづくり技術研究所)
スイスチーズモデルとは~ヒューマンエラーと組織事故のモデル(レジリエントメディカル)
角山剛(2011)キーワード心理学シリーズ12 産業・組織…問題1,4,5において参照。
松尾太加志(2009)ヒューマンエラー防止の外的手掛かりモデル -omission error をどうとらえる-…問題2において参照。
ヒューマン・エラーについての非常にわかりやすいご説明です。ぜひご一読ください!
芳賀繁(2020)ヒューマンエラーと安全マネジメント:心理学の視点からこころの未来 Vol.23, pp.24-27…問題3において参照。
芳賀先生のご著書は事故がなくならない理由 安全対策の落とし穴(PHP新書)もおすすめです!
Kindle Unlimited にも入ってます♪
このページの問題を作るにあたり参考にした文献をご紹介します。
どれも必携の良書ですのでぜひお手にとってみてください。
ご覧いただきありがとうございます。
院試対策のオンライン家庭教師
大学生さんの学習支援
随時、承っております。
お問い合わせはお気軽に^^
→家庭教師カウンセラー メールフォーム
LINE公式始めました
友達追加はお気軽に♪
image photo:Ziaur ChowdhuryによるPixabayからの画像